FEATURE - 2020.08.07

クロモリバイクの魅力

皆さんはスポーツバイクを購入するときに何を求めますか?

 

もしあなたがスポーツバイクを手に取る理由が「レースで1分1秒を競うこと」ではない場合、ぜひクロモリフレームの自転車を選択肢に入れることをおすすめします。

そもそもクロモリは鉄が主な原料となる炭素鋼にクロムとモリブデンを配合した合金のことで、正式にはクロームモリブデン鋼といいます。やや耐錆性、弾性があり、加工がしやすいとされ、半世紀以上にわたり自転車のフレーム素材として使用されている、非常に歴史のある素材です。

 

クロモリを素材とした自転車には

 

しなやかで弾性のある乗り心地
丈夫、かつ他素材よりも修理が容易
細くシンプルな形状

 

という特徴があり、これらは自分のペースで長く自転車を楽しむという目的において、非常に有効になるメリットと言えます。

 

そしてこのことは「カーボン全盛期ともいえる現在のスポーツバイク業界で、違った観点でFUJIがクロモリ自転車をリリースし続ける理由」の1つのとしても通ずるものがあります。

 

しなやかで弾性のある乗り心地
クロモリは他の素材に比べてしなりがあり、しなった後は金属が元に戻ろうとする力が働くため、この反動を動力として走ることができます。アルミほどの瞬発的な加速は出ませんが、自分のペースで楽しむライドや、長距離のライドには非常に有効です。また、自分が踏み込む力に大きく依存するこの独特の挙動のおかげで、「自転車との一体感を感じやすい素材」とも言えます。

 

丈夫、かつ他素材よりも修理が容易
衝撃に強く、落車などでどこかにぶつけたとしても変形やへこんだりすることはあっても、折れてしまったり、欠けてしまったりはなかなかありません。クロモリは使用の過程でフレームに問題が生じても、溶接が可能なので差し替えたりつなげたり、歪みをとる微調整などの修理ができます。また、実際の修理にカーボンほど特殊な設備や技術は必要とせず、世界どこへいっても(発展途上国でも)修理してもらえるところを探せるでしょう。例えば自転車で世界を旅する方も多くがクロモリの自転車を選ぶようですが、その背景にもこういった理由があるのかもしれません。この修理における容易さは、素材本体でなく表面の塗装を傷つけてしまった場合の、剥離、再塗装においても同様です。

 

細くシンプルな形状
カーボンやアルミは特定の部分を薄くしたり太くしたり湾曲させたりと、造形の自由度が高く、デザイン性と機能を両立する合理的なフレームを作ることができます。ただし、こういったものにもやはりトレンドがあります。場合によっては時代とともに移り変わり「過去に流行ったデザイン」となってしまうことも。
一方でクロモリの細身のパイプとラグ(もしくは溶接)だけで構成されたシンプルな見た目は、必然的に「自転車然」とした形状(ダイヤモンドフレーム)を描きます。ロードバイクもマウンテンバイクもかつてはこの形状から始まっており、例えるなら黄金比のようなものでしょうか。この事実からは 長く愛されてきた形状=これからも変わらない=自分も長く付き合える という考えを膨らませることができます。

 

鉄を主な原料とする素材の特性ゆえに、レースバイクにおいて重要な要素となる「重量」は他素材に比べ劣りますが、このようにクロモリの自転車にはそれをカバーするほどの大きな魅力があります。また一概には言えませんが、カーボンバイクやアルミに比べ比較的安価な価格帯で手に入れることができることもビギナーにとっては大きなメリットと言えます。

このように、いくつかメリットは挙げられますが、中でもやはり細身のパイプが描く「自転車然」とした整ったシルエットの魅力は多くの人の共感を得られるのではないでしょうか。その佇まいには他の素材にはない独特の空気感があります。

 

「難しいことはわからないけど、他とは違う細くてスタイリッシュな見た目が最高にかっこいい。」

 

クロモリを選ぶ理由はそれだけでも十分です。

 

次回はクロモリの自転車に見られるディテールを交えながら、その魅力をもう少し深掘りさせていただきます。