NOTE - 2020.08.13

続・クロモリバイクの魅力

こんにちは。

 

前回に引き続き、今日はクロモリの自転車の魅力、後編です。前編はこちら

 

現在、世界のあらゆる自転車ロードレースで、出場者のバイクを注意深く見ると、大多数がカーボンバイクであることに気がつきます。今となってはこれは決して不思議なことではなく、彼らをサポートする自転車メーカーも、ライダーの1分1秒のタイムを縮めるため凌ぎを削り、形状面で自由度が高く素材自体が軽量であるカーボン素材を使用し、革新的なフレームを生み出すことに技術力を注いでいるようにも思えます。
最速を求めるレース機材において、まさに現在はカーボン全盛期とも言えるかもしれません。

 

一方、こういったレース機材から広義での「自転車」へ目を向けるとどうでしょう?

 

例えば日常の通勤や移動において、わずかな衝撃に対しても注意深く扱わなければいけないカーボンでは使いづらいと思う人もいるでしょう。
週末に少し足を伸ばしてツーリングをしたい時に、アルミでは挙動に遊びがなさすぎて、長距離ライドの疲労をダイレクトに感じてしまうかもしれません。
スポーツバイクを求める人が大勢いる中で、コンマ1秒のタイムを争うわけではない大勢の人がいるのもまた事実。

 

日常使用に耐えうる丈夫さ、素材本来の持つ適度なしなり、そしてシンプルで美しい形状。
フレーム素材の原点ともいえるクロモリは、カーボンやアルミなどの新しい素材の活用、進化はあっても、今も昔も変わらず多くの方の心をつかんでいます。

「スポーツバイク」と一口に言っても、乗る人の用途によっては最新のマテリアルが必ずしも優れているわけではない。これこそが、FUJIが現在もクロモリバイクをリリースし続ける大きな理由の一つです。

 

FUJIは今から100年以上も前、今でいう実用車と呼ばれる商品を主に販売し、その歴史を歩み始めました。

時代が移り、レースバイクの開発に注力した戦後以降も、その一方で実用車やツーリングバイク、キッズバイクなど幅広い製品展開は変わらずにあったことが、当時のカタログから読み解くことができます。これが現在の「総合自転車ブランド」としてのFUJIを確立したといっても過言ではありません。

 

レースバイクを開発する一方で、子供たちが人生で初めての一台に選ぶキッズバイクまで、多彩なラインナップをつくり続けてきた。そこには、時代が変わっても競技用/実用に垣根を作らず、広義での「自転車」に真摯に向きあってきたことが強く感じられます。

 

現在、当時の創業者の想いはわたしたちの想像の中にしかありませんが、レースバイクの開発にも全力を注ぐ一方で「競うことだけが自転車ではない」という力強いマインドは今でもわたしたちに残っています。

 

さて、話を少し戻します。

 

前身となる日米富士自転車の創業より、120年を迎えたFUJIも、その歴史の中で多くの時間をクロモリの自転車と歩んできました。それゆえ、現行で展開しているいくつかのクロモリバイクも細部に至るまでちょっとしたこだわりがあります。

 

今回はFUJIの街乗りの定番、クロモリフラットバーロードの BALLAD を例に挙げ、お話しさせていただきます。

 

カーボンなど他の素材に比べて素材自体の強度が高いため、細いパイプの造形で十分な強度を確保でき、これが必然的に細くシンプルな、いわゆる「古き良き時代の自転車」を思わせる造形を生み出します。
「ホリゾンタルフレーム」と呼ばれるトップチューブが地面と平行になっている設計はクロモリフレームの魅力「ミニマルで整った外観」を一層引き立てる条件の一つ。ちなみにFUJIのクロモリの多くは52cm以上のサイズでホリゾンタル形状を描きます。
現在の主流であるアヘッドステムに比べて、ややレトロですっきりした見た目が特徴のスレッドステム。クロモリの持つ、シンプルでシャープな雰囲気を引き立てます。
フロントフォークのクラウン(肩)部分も、年代や目的などによって意匠の違いがみられる面白い部分。こちらはクラシカルなラグフォークを採用。時代の流れでいうと、ユニクラウン(写真のように肩がなく、フォークコラムに直接ブレードを溶接するタイプ)も多いが、歴史的にもロードバイクではあまり採用されていなかった印象です。
フレームがシンプルだと、合わせるホイールもパーツも様々なものに違和感なくマッチします。BALLADでは通称薄リムと呼ばれる、ハイトの低いクラシカルなリムを採用していますが、あえて存在感のあるハイトの高いリムでフレームとギャップを作るのもハマります。

例えば音楽では、「いつの時代も世界中で皆に愛されている普遍的な」音楽のことをクラシックと表現しますが  (よくHIPHOP CLASSICなんていう言葉を耳にしますね) 自転車界においてはダイヤモンドフレームのクロモリバイクこそまさにルーツでありCLASSIC。時代を超えて愛されてきた理由を、少し感じていただけたでしょうか。

 

昨今では、コロナウイルスの影響によって、人との接触を避ける目的で自転車通勤に興味を持ち、自転車屋さんに足を踏み入れる方も多いと聞きます。きっと「初めての1台」にどんな自転車を選ぶべきなのか悩む方も多いでしょう。

 

スポーツバイクデビューのビギナーにも、これまでにいろんな自転車を乗ってきた強者にも、幅広いユーザーを受け入れる懐の広さのある自転車。

 

これを読んで少しでも興味を持っていただいたあなたは、ぜひFUJIのクロモリバイクを1度手にとってみてください。
きっとあなたの思い描く「自由な」サイクルライフを形にしてくれるはずです。