NOTE - 2021.04.16

手に入らないものほど欲しくなる?FUJI BIKESの限定モデル変遷

こんにちは。今日は久しぶりのコラムです。

FUJIブランドを語る上で忘れてはいけないのが、不定期ながらコンスタントに展開されているリミテッドモデル。長きにわたり展開される定番モデルがある一方で、他のカルチャーのエッセンスをより自由に取り入れ、期間限定的に展開されるリミテッドモデルでは、自転車を「競技」や「実用車」という単なる目的としてのみで捉えないFUJIらしさが、より色濃く投影されていると言ってもいいかもしれません。
今回はコラボレーションをはじめとして限定的に展開されたモデルに関して、少し振り返って紹介させていただこうと思います。

 

 

TRACK (× OBEY) トラック
OBEYとのコラボレーションで2008年に発売されたモデル。OBEYは、街中にポスターやステッカーをゲリラ的に貼り付けていくという手法と共に、1989年にキャリアをスタートしたShepard Faireyによるアートプロジェクト。ストリート出身でありながら、現在ではMoMAやサンフランシスコ近代美術館などの世界中の美術館の常設展に作品が展示されるほどで、平和的思想や政治的なメッセージが込められた作風が特徴の、ストリートアート界の巨匠として知られています。ベーシックなクロモリトラックバイクをベースにしており、一見すると現在のシングルスピードの金字塔、Featherとも似ていますが、そこはやはりリミテッドモデル。贅沢なラグフレームや別注のゴールドカラーの高級パーツがインストールされており、ネオクラシックと呼ぶにふさわしい佇まいが印象的な1台です。

オリジナルのヘッドバッジや別注カラーの高級パーツがスペックインされている
2008年のカタログ。右側がOBEY TRACK

 

 

LOW PRO (× Simon Taylor ex.TOMATO) ロープロ
現在もロンドン、ニューヨークを拠点として活動している、世界的に注目されるクリエイター集団が属するクリエイティブ・ビジネス・カンパニー、TOMATO。某有名スポーツメーカー、ジーンズメーカー等々のアパレルブランドとのコラボレーションワークや、映像製作、建築設計、クラブの内装製作等活動内容は非常に多彩ですが、こちらはそのTOMATOのキーパーソンであるSimon Taylorとのコラボレーションで、2011年に国内100台の限定車として発売。その名前はもちろん、特徴的な前下がりジオメトリー(low profile=低姿勢)からきていますが、そこから「エラそうにしない」という想いを込めてたちあがったジャパンコンシャスなコラボレーションプロジェクト「Low-Pro」が派生した、と本人も語っています。車体は80年代のトラディショナルなトライアルレースモデルをイメージソースにしており、スレッドステムなどの硬派なパーツ構成とシンプルなグラフィックのバランスは、単純な懐古主義には終わらない存在感を放っていました。翌年にはマットホワイトカラーが印象的なVer.2もリリースしており、これらの遺伝子は現在の主力モデルであるTRACK ARCVへと受け継がれています。

 

 

SUNDANCE(× Indian) サンダンス
アメリカンオートバイの開祖として知られる、インディアンとのコラボレーションモデル。特殊な形状のフレームは今から100年以上前に繰り広げられていた「ボードトラックレース」で無敵の強さを誇った同社のレースバイクをイメージソースとしています。発売当時はボンビネルの最高速レコードの逸話が映画化されたり、それまでの長年の沈黙を破り新たなモデルがリリースされたりと、インディアンの再熱が目立っていたのもあり、こちらも一部のコアなファンから圧倒的な支持を受けました。
モデル名のSUNDANCEは、もちろん本来の単語が有する「インディアンの踊り」を重ねているのですが、実は過去(1980s頃)に展開されていたモデル名からの引用でもあります。FUJIは1987年に同名のレーシングチームも運営していた記録もあり、「サンダンス」はとってのキラーワードでもあったようですね。(どうでもいいけど当時の選手たちがやたらにスタイリッシュ…)

1987 Sundance racing team

 

 

MTF エムティーエフ
2014〜2015年の2年間で限定的に展開されていたモデル。なかなか印象的な名前ですが、Fワードの頭文字をとったとか決してそういうわけではなく…。実はこちら、1980年代に実在したFUJIのMTB「Mt.Fuji」というモデルから由来しております。引用元となったMt.Fujiは当初アメリカへの輸出向けのモデルとして生産されていた記録があり、日本ではまた別の名前で販売されていたようですが、海外でその名を轟かせたその後、日本国内向けも改名したとかしなかったとか。MTFはクロモリのフルリジッドMTBというトラディショナルなスペックながら、フォークの二枚肩やゴールドを挿し色にしたカラーリングなど、ビンテージのMTBをベースにしながらも独自のアレンジが加えられており、いわゆるOLD MTBフリークをはじめとするコアなファン層から強く支持されたました。クロモリMTB全盛の時代を投影した単なる懐古主義ではなく、ディスクブレーキ台座も備えておりカスタムでいろんなアプローチが楽しめるのも支持された理由のひとつかもしれませんね。実は復活を望む声を方々で聞いたりするモデルでもあります…。

トラディショナルなブルムースバーやダブルクラウンのフォークが個性的
かつてアメリカで展開されていたMTB Mt.FUJI

 

 

Feather 120th Anniversary フェザー(ブランド創業120周年モデル)
最後はFUJIを象徴するシングルスピードとしてシーンをリードし続けているFEATHERの2021年の限定モデルです。前身となるブランドの創業から120周年を記念して、FUJIシングルスピードの金字塔となるFEATHERの記念モデルを日本限定100台で2021年モデルとして発表されました。FEATHERの最大の特徴であるシンプルな機能美はそのままに、贅沢なラグフレームをベースに組み上げられており、ヘッドバッヂはビンテージのFEATHERと同様のデザインが用いられていて、かつてのFUJIフリークの心をもくすぐる仕様になっています。もちろんパーツ構成も抜かりなく NITTO/Sugino/Panaracer のジャパンブランドのパーツがアッセンブルされており、ブランドの出自を感じさせるジャパンコンシャスなスペシャルワンバイクです。(現在はFUJI取扱店にて予約を受付中) 詳しくはこちら

 

 

いかがでしたでしょうか。
残念ながら紹介したほとんどのモデルは入手困難ですが…。あらためて、欲しいものはグッときた時に手に入れる大事さが身に染みます。でもこうやってみると、たまに振り返ってみるのも面白いですよね。FUJI BIKESの長い歴史の中では、まだまだご紹介しきれないモデルもあるので、頃合いを見てまたご紹介させていただきますね。